初めてでも安心! アートが息づく瀬戸内国際芸術祭の会場『男木島(おぎしま)』の作品を解説!【ぼーっとした旅の助言〜四国編〜】
はじめに


皆さん、こんにちは、静田です!
日本にはたくさんの魅力的な島がありますが、今回は私が瀬戸内国際芸術祭をきっかけに訪れた、香川県高松市の沖合に浮かぶ男木島(おぎしま)についてご紹介します。
アート作品や独特の雰囲気など、たくさんの魅力が詰まった男木島がどんな島なのか?
noteでも簡単に触れていますが、今回は芸術祭で見かけた作品を中心にお伝えできればと思います。
男木島ってどんなところ?
noteでもお伝えしましたが、男木島はアートと暮らしが息づく迷路のような街です。


男木島は、高松港からフェリーで約40分(女木島経由)の場所に位置する、周囲約5km、面積1.34㎢ほどの小さな島です。人口は140名ほど(2023年時点)。
港から見上げると家々が山の斜面に密集した島となっており、街の中を進むと道は狭く、坂道や石段が迷路のように入り組んでいます。初見だと迷いやすいのでご注意を(僕も何度か迷いました……)。




アクセスは、高松港から雌雄島(しゆうじま)海運のフェリー「めおん号」に乗船し、鬼ヶ島伝説で知られる女木島(めぎしま)を経由して、男木島へは約40分ほどの船旅です。
瀬戸内国際芸術祭 会期中での注意点
注意① 時間帯や時期によっては、フェリーがめちゃくちゃ混雑します!
今回はGWでも飛び石となっている平日の朝に訪れましたが、朝一の便でも女木島・男木島へ向かう船はすぐに座席がなくなるほど混雑します。
幸いこの時は待機していた乗客全員が乗れましたが、GWやお盆などの繁忙期では、時間帯によっては混雑で船に乗れないことも(特に夏の時期)。フェリーへ乗船する際は時間に余裕をもってフェリーを待ちましょう。






注意点② 事前にトイレは済ませておきましょう!


男木島の玄関口で白い屋根が特徴的な「男木島の魂」は、交流館やフェリー待合所、そしてトイレも備わってます。
島内ではここ以外に観光客向けのトイレがほとんど無いので、島を巡る前に必ず用を足しておきましょう。
芸術祭会期中で見られる作品たち
僕が春会期で男木島に訪れた時に見た作品を掲載します。なお、スケジュールや尺の都合から、ここでは芸術祭会期中のみ見られる作品を中心に掲載しています。あらかじめご了承ください。
og03: 生成するドローイング -日本家屋のために2.0 / 村山悟郎




1階と2階で作品があり、それぞれ壁には絵が描かれている。1階では植物が描かれ、2階で描かれた白い模様は貝をモチーフにしたものだという。そしてパンフなどで知った事ですが、どうやらこの模様は、数学などで見られるセルオートマトンと呼ばれる法則をもとに創られているらしい。




一見単純な模様でも、実は作者の計算に基づいて創られており、なによりそれを一つひとつ地道に描いていることに作者の執念が伺えます。そんなアーティストの魂に触れられるのもまた、芸術作品に触れる楽しみのひとつだと思います。
og05: 男木島路地壁画プロジェクト wallalley / 眞壁陸二


男木島の街の至るところで、色とりどりのペイントで描かれた壁画と出会えます。
この作品は路地裏プロジェクトの一環で、この島で集めた廃材など描いたものを民家の壁に貼り付けているそうです。このほかでも廃材などを再利用した作品はあるので、時間があればぜひ見比べてみてください。
og07: ドリームランド / 川島猛とドリームフレンズ


現代芸術家・川島さんの代表作・ドリームランドを展示した作品。本来は平面作品だったものを誰もが身近で鑑賞できるよう立体化したそうです。戦後日本が抱えてきた呪縛からの解放というのが、この作品のテーマとなっています。




大きな壁画がいくつもありますが、最初の壁画では形も色も画一的で単調だったものが、少しずつ別の形が生まれていて色とりどりの風景へと変わっているのが分かります。
壁画に使われている形や色使いの変化から、何を伝えようとしたのか? 自身の目で確かめたあとで自分なりに考えてみると、面白いかと思います。
og08: アキノリウム / 松本秋則




薄暗い古民家に入ると、1階では影絵が映し出され、2階に移ると竹細工などのオブジェクトが光と陰に包まれた空間で動きながら、静寂な室内にほのかな音を奏でていく。神秘的な空間にどのような音が、どのような光景が広がるのか? ぜひあなたの目と耳で直接確かめてみて下さい。


og14: 漆の家 / 漆の家プロジェクト




香川の漆芸家たちがこれまで培った漆塗りの技法をこめてリノベーションされた家屋。ほのかな漆の香りを感じながら瀬戸内の海を見渡せる機会なんて滅多にないかもしれない。黒い部屋と白い部屋の2つあるが、いずれも艶やかな漆塗りの壁に一瞬目がチカチカしてしまいました。


ちなみに漆の塗り方も数種類の型があり、漆芸家たちの作品を拝む事もできます。精巧に描かれた模様は、職人が作品や技術磨きに長い時間かけていることがうかがえます。最近は生成AIによりイラストなど瞬時で創れてしまう時代なだけに、人間味あふれる作品は職人の魂が感じられて感動を覚えたのを記憶しています。
伝統工芸がいつまでも続くように。そう思わずにはいられませんでした。
og15: 部屋の中の部屋 / 大岩オスカール


一見すると、古き良き和室。しかしこれ、実は90度傾いているのです。襖を地面にしながらちゃぶ台が置かれた畳を眺めるとは、なんともシュールな光景。


根性で畳の上に立ってみました。
どうにか立っているような風景になりましたが、実際には寝た状態になっています(笑)。
ちなみにこの写真は、他のお客さんがいない時間を見計らい、係員さんに許可のうえ撮ってもらいました。作品を傷つけないよう、壁には足をつけておりません。
og18: 男木島パビリオン / 大岩オスカール、坂 茂




豊玉姫神社からほど近い場所にある建物のガラス窓には男木島を現すめおん号やタコなどが描かれている。男木島はタコ壺漁が盛んなこともあり、「タコツボル」など他でもタコをモチーフにした作品はあります。しかしこれ、ただ描かれているだけではありません。


3枚の窓をひとつに重ねると、実はもうひとつ新たな絵が現れます。
ちなみに窓が重なる時期があるのか残念ながら分かりませんでしたが、いつの日かひとつに重なった時の絵を直で目にしてみたいです。
og 21:男木島未来プロジェクト/ 昭和40年会




複数のアーティストさんたちが集って共同制作されたもので、アーティストさんたちが考えた架空の未来をもとに、100年後の2125年から今を振り返るという変わったコンセプトの作品。
この架空の未来を簡潔に告げると、男木島で栽培された麦から作られた「男木みそ」と「男木ビール」がヒット商品となり、さらに人々の長寿化を招いたことから一躍世界から脚光を浴びるというもの。
どのような未来が描かれていくのかはお楽しみに。ちなみに夏・秋会期では「男木ビール」の試飲会も行われるようなので、夏や秋で来られる方はお見逃しなく。
og 22:ゆめうつつ〜みらいのワタシ/ 松井えり菜




「顔」に魅入られた作者さんが男木島に通う小中学生さんたちの自画像をもとに共同で作成した作品が集う場所。説明によると、生徒さんが書いた自画像をシルクスクリーンの版を重ねることでつくられた版画みたいです。一見すると精巧な絵に見えてしっかりと自画像の要素を残しているのが、素直にスゴい……。


何かの常識にとらわれない作者さんのインスピレーションは、創作には無限の可能性があるのだと思わせてくれる。そう思わせてくれるから、芸術鑑賞がやめられないのかもしれない。
og23: 私たちの島 / エミリー・ファイフ




男木島を描く一つひとつ藍色の生地は、島の伝統的なくるま織り、しじら織り、リサイクルされた服や布などを島民たちからかき集めて作られたものだそうです。
島独特の布切れで自分たちの島を創り出す。視覚的だけでなく、素材で島を表現していることに、独自性や島を愛する作者の想いが伝わる作品となっています。
訪れてみての感想:発見に満ちた、歩くのが楽しい島


瀬戸内国際芸術祭の作品を目的に訪れた男木島でしたが、アート作品だけでなく、島そのものが持つ独特の雰囲気など、すべてが魅力的でした。
坂道や階段が多いので少し体力は使いますが、それでもアート好きはもちろん、猫好き、島好き、路地裏好き、そして美しい景色を求めるすべての人なら訪れる価値のある素晴らしい島なのは間違いありません。
高松からのアクセスも良いので、近くによることがあれば、ぜひ次の旅の候補に加えてみてはいかがでしょうか?
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